【秋号】やきいも
思いついたかのように、通りすがりのスーパーにより焼き芋を買った。
少し走った先にあった、お社脇の公園に車を止め、ベンチに腰かけ取り出した焼き芋を二つに折ると、黄金色の輝きがむき出しとなり思わずオーッ!と声が出てしまった。
子どもの頃あまりお菓子などは買って貰えなくて、秋になるとイモが良く出て来たことを思い出す。
それでもやはり嬉しいオヤツだ。何とも言えない黄金色をほおばりながら、そばに聳えている大きなクスノキが枝を広げているのを見上げていた。
「楠」は南から来た木の意味らしい。
また「樟」とも書きこれは「臭し」から来ているそうで、樟脳の原料ともなっている。
“大きな木の下には何もないけれど、木の大きさと同じだけの沈黙がある”と、謳った詩人長田弘さんの詩が思い出される。
ほのかな香りのある、おお~きな沈黙にしばしひたっていると、郷愁の甘味がさそうサツマイモの美味さの中に、昨日からのモヤモヤがスーゥーと溶け込ん行くような気がした。
“やきいもさん”ありがとう。