【早春号】麦踏み
まさに“小春日和”。
真っ青な青空に、思わず“ヤッホー!”と声を上げたくなるような早春の景色に、麦踏みを手伝った子供の頃を思い出した。
厳しい寒さにたえて春を待つ麦の芽は、伸びすぎても、霜で根が浮き上がっても困るので、足で踏み固める作業がいる。
足を横向きにしてセッセセッセと踏んでいると、単調さに嫌気がさしたり、シモ肥で靴が臭くなり、タワシに石鹸をつけて何度もゴシゴシするが、2~3日は匂いがとれないので学校へは履いて行けなかったりと嫌なことも多かった。
しかし、それよりも“ボクのお陰で早く済んだ助かったぞ”と言って、ご褒美に貰う十円玉や湯気の立つ焼き芋の味。
そのうれしさと美味しさは今も鮮明に思い出す。
あれから幾星霜、公園で遊んでいる子供たちの姿をながめながら、ふと、あの麦踏みのリズムがよみがえる。
今はすっかり麦の蒔き方も踏み方も変わってしまったが、麦の青芽を目にすると遠い昔の風景が思い出され、懐かしさが募って来る。
そういう子供の頃からの積り積もった日々が、遠い昔のようでもあり、ついこの間のようでもある。